2020年12月18日金曜日

ブログ小説 アンシエンラント創世記 3話 再生 3章.死は再び巡る

アンシエンラント創世記 3話

―――――再生―――――

3章.死は再び巡る



長剣を引き抜き、石橋の上を駆ける。
青年と広間の一団は程なくして、力と力で激突し合うのだろう。

「来た!
俺達は、あの若造を抑えるぞッ!
相手は独りだ、続け!」
「間抜けめェッ!
この数を相手取れると思っているなら、おめでたい奴だ」
「今更怖気付いても遅ぇぞ?
ここでくたばれ!」
口々に言いながら、ハザの方へ詰め寄る者達。
内容など何でもいい、こちらを少しでも、気押そうとして言っているのだ――その程度の事を、いちいち気にして悄気返っていては、戦いにならない。

油断するのとはまた違うが、対峙する際は、相手を食って掛かるのも、良い方法のひとつだ。
言葉尻を捕え、揚げ足を取って逆に熱くさせ、先に手を出させてしまっても良いが、それには相手を観察出来る冷静さ、すぐに言い返せる機転の早さが必要になる。
侮蔑を含む、罵詈雑言に耐えられるならば、完全に無視してしまってもいいだろう。
強烈な攻撃を先に浴びせ、不遜な態度を怯ませてしまえば、きっとすぐに、黙り込んでしまうに違いないのだから。
だが、それ等は上手く行かねば、逆に相手に好機を与えてしまうだけだ。
ムキになって挑み、無様に返されてしまえば、それだけで相対的に、相手に余裕が生まれる――墓穴を掘って自滅など以ての外。
幾ら慣れていたとしても、勝つ、という事は、決して簡単な事では無い。
以外と難しいものなのだ。
戦いが巧みな者程、失敗や不利な点を隠すのが上手で、失態からのリカバリー立ち直りも速い為、何時までもその点を見抜けない限り、アドバンテージ優位性を良い様に取られ続け、気が付けば負けている事が多くなるだろう。
相手を油断させるにしても、多少は打たれて手を出し易くする等、それなりの犠牲は必要になって来る。
上手く行きそうだからと言って、調子に乗って打たれ過ぎれば、結果反撃する力や機会を失った上、そこが致命傷となり、敗北を喫する事となっては元も子もない。
どんな相手だとしても、どのような手を打つにせよ、コイツは手が出し難いぞ、と思わせた上で、牽制を繰り出す気力を削り、いざという時の一か八かの賭けに出る意志を、委縮させる必要がある。
基本としては、出来得る限り早く相手の癖を掴み、対策を講じて出鼻を挫く――簡単に出来る話では無いが、これを続けてゆく事が最も、リスク危殆が少なく勝ち星を得やすい方法だろう。

ハザが選んだのは、後者の方であった。
数を前にしても、構えた長剣を前に臆せず進み、駆けながら振るうと、先頭の者から痛烈な苦悶の呻きが響く。
「がァッ」
強烈な一打を額に受け、飛び掛かって来た者が、思わず武器を取り落とし、頭を押さえ蹲る。
丈夫な兜に大きく傷口が開き、その内側から、大量の血が溢れ出す。
「小僧の様な顔立ちで、悪かったな」
若造と呼んだ男を率先して狙い、打ち倒したハザは、さも機嫌が悪そうに言い放つ。
そして、続けて向かい会う、対峙した者へと向き直った。
直後、手にした長剣を、続けてもうひと振り。
受けそこなった素早い斬撃は、反射的に構えた剣を軽く弾き、首元の鎧の隙間へと叩き込まれる。
倒れ逝く者を尻目に、更に近づいて来た者へ、もうひと振りを加え、3人目を打ち倒した頃には、彼に向かってくる敵の脚は止まっていた。
これ以上不用意に近づいても、被害が大きくなるだけだと、気付いたのだろう。
いや、この場合は気が付かせた、と言っても過言ではないかもしれない。
対峙した者達は、青年と立ち会う事に対して、慎重に事を構える方へと大きく舵を切る。
足さえ止めてしまえば、多方面から攻撃される機会も減る筈だ。

そこへ、新たに立ち塞がる者からの呼び声。
「やるな、若造――今度は俺が相手だ。
かかってこい!」
明らかな挑発――そちらの応対に手を焼けば、後ろから仲間が襲ってくる算段に違いない。
目の前の男に呼応し、もう既に1人2人が、青年の後ろへと回り込むべく、走っている。
だが、その言葉の何が、気に入らなかったのだろうか?
言葉を耳にしたハザの目端と口端が、途端に吊り上がってゆく。
「……まだ、言うか?」
まるで唸り声を上げ続ける獣の様に、歯を剥いた彼は囲まれるよりも速く、挑発を行った者へと向かい駆け出す。
高い洞察力を活かした読みが当たったのか、それとも、相手を乗せる口車が巧みであった為か。
その効果こそ予想外に高かったものの、ハザの神経を逆撫でした挑発を行った代償を、彼は直ちに自らの命で支払う事となった。
両手で長剣を、これでもかと言わんばかりの勢いを付け、思い切り振り下ろす。
対峙した者はそれを受ける事も、避ける事も出来ず、兜に叩き付けられた長剣からは、拉げ潰れる感触が伝わる。
1度大きく屈み、そして跳ね上がる様に、宙をもんどり打って倒れた者は、その場で大きく痙攣しそして、動かなくなった。
潰れた兜や首周りの隙間からは、命の源が赤い泉となって、こんこんと溢れ出し、冷たい石床の上に広がってゆく。
やがて、遺された熱は徐々に奪われ冷めてゆき、その血温は辺りの石くれと等しくなるのだろう。

しかし感傷に浸る間も無く、間髪入れずに長大な盾を持つ巨漢が、どすりどすりと足音激しく、ハザの前に立ち塞がり、身構える。
互いに敵同士、最早語る事も無いと、その姿勢が物語っていた。
背後で悲鳴が上がったが、気にしている余裕は無さそうだ――彼女も上手くやっている事を信じるしかない。



ハザが巨漢と対峙する、ほんの少し前の事。
手にしている壊れたランタン角灯をふわりと浮かせ、やや後ろで青年の背後を、警戒するように控えていたリム。
物を宙に浮かせる、奇妙な技の披露に彼らは、初めこそ驚きの表情を隠せなかったが、それ以上は何も起きないのを見て、すぐに落ち着きを取り戻す。
獲物を手にした物々しい連中は、構わず距離を縮めてゆき、そろそろ剣が届こうかという時、何を思ったのか、彼女はその場に屈み込む。
多勢に無勢、観念したのかと思いきや、転がっているごく小さな小石を、摘まんだだけの様だ。
石を摘まんで、一体どうしようと言うのか。
例え力一杯投げた所で、この非力そうな女の細腕では、精々が兜や鎧を軽く鳴らす役にしか立たないだろう。
右手と左手の親指と、人差し指の間に、僅かな欠片を挟むと、徐に彼女は立ち上がる。
すると、摘まんだ小石如きで何が出来る、大した武器も持たぬ小娘など、我々に掛かればひと息だと、一斉に詰め寄る鬨の声が、忽ち恐慌の色に染め上げられた。
「うわあっ?」
「な、何だあッ!?」
これは、何とした事だろうか?
リムを取り囲んだ者達、ハザの背後に回ろうとした者共が、何やら見えぬものに吊り上げられ、竿に取り付けた旗を掲げた程の高さで、手足をばたつかせて浮いている。
激しく手足をばたつかせても、抜け出す事の出来ない困惑と憤りが後に続く。
取るに足らぬ、と思っていた小娘が、自分達に何をしたのか、見えざる手――とでも言うべきものに掴まれ、吊るされた者達は、未だに理解が及んでいない様であった。

やがて手を内に向け、じっと欠片を見つめていた女が、その両腕を左右に広げる。
すると、更に奇妙な現象が、彼等の身の上に降り注ぐ。
ふわりと浮いた者達は、2手に分かれると床の無い橋の外側、そして闇がぽっかりと口を開ける奈落の上へと、宙を滑る様に運ばれてゆくのだ。
「ヒィィ!?」
「うあ、や、やめろ!
お願いだ、止めてくれえーッ!」
「悪かった、俺が悪かった。
たた、助けて、助けてェ!」
彼等を掴む見えざる手は何がしたいのか、漸くその意志を察すると、浮いた者達は目に涙を浮かべ、畏怖で占められた声で必死に叫ぶ。
或る者は、益も無く只々ひたすらに助けを請い。
或る者は、金品を捧げると空約束を口に上らせ。
或る者は、頼みもせぬのに突如忠義を誓い始め。
或る者は、偉大な才を永劫に祀り上げると嘯く。

だが、彼女の方は言葉を聞き入れ、宙吊りを止めてくれる気配は、全く伺えない。
彼等は冷徹なその様子を見て恐れ戦き、今までの自らの行いを顧みず、命乞いを大仰に喚き散らし、より一層手足をばたつかせて、懸命に拘束から逃れようとするが、その手に掴めるものは何処にも無く、何にも乗らぬ足は、虚しく空を切るばかり。
そしてリムは、益々立ち昇る狼狽の声にも、茫洋とした澄まし顔を崩さず、大きく広げた左右の手に、摘まんだ小石をひょい、と放った。
手を離れた小さな小さな欠片は、軽く弧を描くと、かちり、ころころと音を立てて、石床へと転がり落ちる。
するとどうだだろう――見えざる手に宙吊りにされ、身動きの取れない者達も、不思議とそれに倣う。
それらはまるで、食べ終えた後に投げ捨てられる、果実の芯の如く――。

「うぁ、うわあ!
わあああああ~~~~~~~ッ!」

……少しだけ、違う所があるとするならば、吊られた者達は小石では無く、その足元に床は、無い。
思わず耳を塞ぎたくなる様な、痛ましい絶叫を残して、彼等は奈落の底の暗がりへと、その姿を消した。



巨漢は青年へ向けて、剣を振り抜く。
大きな盾で視界を塞ぐようにして、敵を押し込み、強烈な殴打をお見舞いする。
得意とするパターン戦法、位置取りや狙いの精度は共に完璧。
この一撃、そう簡単に避けられはしない。
しかし避けるタイミング機会判断を失った、と思われたハザは、左手をふらりと軽く無造作に振った様に見えた。
カチリ、と小さく左手の円盾が鳴り、剣は巨漢の予想とは違う方へと滑ってゆく。
満を持しての振り抜いた強打は、目の前の青年に何ら有効な1打ではない。
僅かな音がしたのみで、巨漢の攻撃は失敗に終わる。
繰り出される渾身の攻撃を、普段見せている剣を振るかの如く、素早い動きで盾を巧みに使い、僅かに掠らせて明後日の方向へと、逸らす事に成功させたのだ。
向かってくるのは、片手での斬撃。
盾で受け流すのはもう間に合わない――が、両手で振るよりは軽く、弱いに違いない。
頭を突き出し、打点をずらしてやれば、尚良い結果が得られる。
やがて、軽い攻撃は、頑丈な兜に弾き返され、大きな隙を晒すだろう。
その時こそ、無防備となったその胴や頭に、こちらの打撃が今度こそ届く筈だ。
巨漢は僅かに首を動かし、より頭を突き出して、剣による攻撃を受け流そうとする。
彼は、兜の内側で唇を歪め、独りほくそ笑む――慌てふためく若造の顔が楽しみだ、とばかりに。

待ち構えた巨漢に、鋼の刃と、兜のぶつかり合う音は聴こえて来ない。
代わりに響いたのは、自らの頭が拉げ、断ち割られる音。
続いて、手にした盾へがつん、と衝撃を感じたが、そこで勢いは止まらず、横薙ぎに胸の内を、冷たく硬い何かが駆け抜けてゆく。
丈夫な鋼に全身を包んだ筈の巨漢は、頭だけでは無く、長大な盾を持つ腕や、その胸の奥にある肺すらも、振るわれた長剣によって叩き潰されていた。
だが、身に着けた鎧兜は、ほぼ無傷である事に、気が付いた者は、果たして居ただろうか。
巨漢は吐く言葉を失い、藻掻き苦しみながら、どう、と広間に倒れ伏す。

今までに多数、長剣を振るって来た中で、研ぎ澄まされた最高の斬撃、だった。
剣を振るう直前、腕と心の臓に、世の全てが集まってゆく様な――。
己でも信じられぬ程に、剣を持つ腕が張り詰め、視野に映る何もかもが、まるで嘘の様にゆっくりと、動いてゆくのが分かる。
あれが、あの集まった何かを常に振えるのなら、最早自身に敵は居ないだろう。
剣だけではないが、何か道を極めるとは、あの感覚を、常に手にする事では無いのか。
だが、今はもうその胸中には、暗雲が垂れ込めるかの如く、澄み切っていた心へと靄が満ちてきていた。
普段と変わらない、その筈なのだが、あの時と比べれば、手足は既に鉛のように重く。

あの感覚を、再び掴む事はもう、出来ないのだろうか……?

その時、ガチャリと鉄の擦れ合う音が聴こえ、ふと青年は我に返る。
地に伏せ、呻くだけだった巨漢が、鎧の隙間から血を流しつつも、起き上がって来たのだ。
「――ッフ、……まだ息があるのか。
タフ頑強だな――」
何とか起き上がった、とは言えども、既に戦える状態では無いのだろう。
生まれたての獣の如くふらふらと足を震わせ、辛うじて立ち上がる者を前に、僅かに表情を緩めたハザは、賞賛の言葉を投げ掛ける。
その声はどことなく、嬉しそうな響きが含まれている、そんな風に聞こえた。

しかし、此処から先は、勝負と呼べるものでは無い。
先程より強烈さは失われたが、変わらず速く容赦の無い斬撃が飛ぶ。
気力だけで何とか保っていた意識を、1撃の下に刈り取ると、今度こそ巨漢は地に倒れ伏し、2度と動かなくなった。



そして、静寂が満ちた広間に突然響いた、硝子が砕け、石と鉄がぶつかり合う、甲高い音に彼は振り向く。
背後を見れば、これで何度目になるであろうか、再びリムが倒れているのを目にした。
その近くで何者かが、喚起の雄叫びを上げている。
「ハハッ――!!
や……、やったぞっ!
こ、この俺が、神を屠った――!」
娘に刃を突き立て、その死を看取った末に、へたり込んだ男は、大きな声で喜びを表す。
見事主命を成し遂げ、かなりの量の金銀が報われる筈。
いや、これで歴史に名が残る――長年望んでいた、国に仕える事も、夢ではない。
今までは雲の上の存在であった筈の、王や執政者が、頭を垂れて自身を出迎えてくれる。
俺の名が、神を斃した英雄として、後世まで語り継がれるのだ。
村に帰ったら、待っている妻も子も、喜ぶだろう。
「やった!
やったぞォーーーーッ!!」
歓びの声が木霊し、うおお、と両腕を天につき上げ、涙ながらに雄叫びを上げる。
しかし、その雄叫びは最後まで続く事が無かった。
げぶりという音と共に、勢い良く喉を貫いた、冷たく鋭い鋼の塊が迫り出す。
声も無く、大きく震えた男は、両の瞳がぐるりと上向くまで、左程の時間を要せず、ハザが長剣を抜くと同時に、仰向けとなって倒れる。
引き抜いた剣の先端からは、赤黒い鮮血が滴り落ちていた。

橋の広場、娘の袂にぽつんと転がる、壊れた小さなランタン角灯
先程の金属音は、これが床に落ちた音かもしれない――頼り無げに揺れていた灯火の消えた事が、不思議と彼女の死を思わせる――恐らくはまた、ぼんやりと眺めて、避けなかったのだろう。
石造り床に俯せ、事切れたリムの周りには、争った跡がまるで見られない。
あの時と同じように、迫り来る敵を前に、全く何もしなかったのが、容易く想像出来る。
彼は遺体となった娘に近づき、屈み込むと、柱に灯る明かりを頼りに、その躰に付けられた傷を調べた。
剣で貫かれた傷口は深く、例え今生きていたとしても、この傷ならば遅かれ早かれ、いずれは辿ってゆく事だろう、死すべき道を。
1度こうなってしまえば、手当が得意な知恵者ではないハザには、どうしようもない。
巨石に潰されても、滅びないと言った彼女は、剣で討たれるのだろうか。
暫く待ったが、娘は生き返り起き上がる気配は無く、振り向いてもあの時の様に、姿を現す事も無く、よくよく考えれば、屍を茫然と眺めるしか出来ない青年は、彼女を蘇らせる術を、まるで知らなかった。
そう思うと、彼の助けを待っている、と言う訳でも無さそうな気がしてくる。
せめて蘇らせる手段を、生きてる内にでも、訪ねておけば良かったのかもしれない。

やがてハザは、こうしていても仕方がない、と立ち上がり、悩まし気な面持ちで頭を掻くと、再び歩き出す。
かつて、2人で渡ろうとしていた方角の石橋を踏み越え、再び細く狭くなる、その先の通路へと。
後に残されたリムのローブ表着が、一陣の風に揺られ、さらさらと戦がれ続けていた。

再び独りとなった青年は、黙々と地表を目指し、先へ進む。
今、自身のいる場所は何処なのか、既に分からなくなっている。
印を入れていない、全く見知らぬ通路を通っている事だけは、確かだ。
真っ暗闇を進む事を覚悟していたが、壁に取り付けられた光源が、弱々しく輝いている為、進む事に思っていた程の苦労はしていない。
正直、伸ばした手の先を見るにも、苦労する程の薄暗さだが、進む先が察せられるだけ、遥かにマシであるが。
敵が襲撃を掛けて来ても、この明るさであれば、対処する事は容易いだろう。
それだけは、守らねばならぬ者を失った今、気楽に構えてはいたが。

通路を歩くハザは、軽い変化に気付き、歩きつつも顔を顰める。
何時の間にやら背後に揺れる、微かな気配――。
微かな衣擦れの音が、背後から聞こえた気がした。
やがて突然背後から現れた光に、彼は背を照らされた様に思う。
左右を見渡すと、壁に明かりが映し出されており、前を見ると青年の影が床へと伸び、その動きを正確に真似をし始めている。
そして、かちゃり、と、僅かな金属の擦れ合う音。
聞き覚えのある音に、両手でランタン角灯を下げる、先程斃れた筈の娘の事を思い出す。
それは再び、きいきいと微かな音を上げた。
進みつつも耳を澄ませるが、何時の間にか誰か――恐らくは彼女である事は、間違いないだろう――が後を着いて来ている。
そろそろかと思ったが、やっぱりか。
あの女――年頃の娘の様にも見えるが、かなりの食わせ物だな。
或る予感に従い、物は試しと足を止めると、やや暫くの間を置いて、衣擦れの音も止まった。
そして歩き出すとそれは、まるで風に揺られるかの如く、僅かな音を立てつつ、後を着いて来る。
再び立ち止まり、頭を掻きながら厳しい面構えを、更に渋く歪ませると、彼は振り向きざま、叫ぶ様に言う。

「俺はもう、驚かんからなッ」

振り返ったハザがびしり、と指を差すその先には、茫洋としつつも、澄ました面持ちを全く崩さぬ、リムの顔があった。



ブログ小説 アンシエンラント創世記 3話3章挿絵

【争いは、どんな時代でも時と場所を選ばない】